商品情報・ストア My Sony Feature 誰もが簡単に自分のアイデアを形にできれば、世の中はもっと面白くなる#003

想いをカタチに

MESH(メッシュ)イメージ
#クリエイティビティを高めあう

誰もが簡単に
自分のアイデアを形にできれば、
世の中はもっと面白くなる
#003

第3回目の“My Sony STORY”は、プログラミングや電子工作の知識がなくても、家にある身近なものとツールを組み合わせてプログラミングすることで、さまざまなアイデアを形にできる「MESH」(メッシュ・Make、Experience、Shareの略)を企画・開発した萩原のストーリーです。
MESHが生まれるきっかけや、どのようにカタチにしていったのか、その想いに迫りました。

さまざまな分野の知識と経験を掛け合わせて、
新しい“モノ”“コト”を生み出したい。

MESHがうまれるきっかけをお伝えするには、私自身がこれまで歩んできた道をお話ししたほうがよいかもしれません。私はもともと好奇心が強く、小さい頃から何でも新しいことに興味をもつ子どもでした。中学生のときにプログラミングを始め、高校からはバンド活動でロックやパンクに打ち込むなど、異なる分野を行ったり来たりしていました。
大学時代はエンジニアリングを軸にアートやデザインについて学びました。大学院ではアナログの動きを直観的にデジタルで使えるようにするなどメディアデザインを研究。そのなかで、“コンピュータは創作のツール”という感覚が実体験として強化され、自分の興味が“人のためになるコンピュータ”という領域だという気付きにもなりました。
そうしたさまざまな分野の知識や考え方、経験を掛け合わせることで新しいアイデアが生まれることが多く、いつか新しいモノ・コト・価値を作りたいという想いを抱くようになり、ソニーに入社しました。
「MESH」の企画・開発者  MESH事業室 萩原

「MESH」の企画・開発者 MESH事業室 萩原

誰もが手軽にテクノロジーを活用しながら、
日常をライフハックできないか?

入社後は、ソニースタイル(現ソニーストア)のシステム開発から始まり、ネットワークサービスの企画・開発、テレビ番組のオススメ機能や音楽のプレイリスト生成などのアルゴリズム開発に携わりました。その頃、次々と新しいサービスや企業がうまれていたシリコンバレーのスタートアップの手法に強い関心を抱き、社内制度を活用してスタンフォード大学に留学しました。

シリコンバレーでとくに印象的だったことは、ふたつあります。ひとつはプロトタイプの作り方。紙を使って15分くらいで作ってしまうような時間もお金もかけないもので、日本で見ていたような完成度の高いプロトタイプと全く違っていたことにカルチャーショックを受けました。もう一つは誰でも自由に参加できるミートアップという勉強会。そこでは日常の中でふと感じる“こうなったら便利だな”“こんなものがあったら面白いな”というような情報交換も活発に行われていました。興味さえあれば大手IT企業の社員でも、リタイアした高齢者でも受け入れてくれるオープンな土壌にも衝撃を受けました。
それらの経験から、日常生活がより便利に面白くなる“新しいモノを生み出したい”という気持ちがますます強くなっていました。
そんなある日、“簡単にアラームを止められない目覚まし時計があったらいいのに”という想いが生まれました。というのも私は朝に弱く、無意識のうちに鳴っているアラームを止めてしまうことがよくあり、起き上がって移動しないと止められないアラーム時計がほしいと思ったのです。
はじめは既製品を探してみたのですが、そういう製品は皆無。だったら自分で作ってみようと思ったのですが、私はソフトウェアのエンジニアだったので、無線やバッテリー、電子工作の技術が必要なハードウェアはなかなか難しい。スマホだったら好きなアプリを簡単にインストールできるのに、生活空間ではなぜできないのだろう? そう思った瞬間、今のMESHにつながるようなツールがひらめき、その場で慌ててアイデアを形にしました。それが、プリントアウトしたピクトグラムをスチレンボードに貼ったMESHの第一弾プロトタイプです。
最初のプロトタイプ

最初のプロトタイプ(制作時間20分、材料:スチレンボード、プリンター用紙、材料費数百円)

専門知識がなくても
文房具のように、だれでも直感的に使えるものに。

まずは、このプロトタイプを使って、知り合い経由でいろいろな人に自分たちの手で日常の困りごとが解決できるようになったらどうかとヒアリングしていきました。いただいた声をもとにいくつもの試作を重ね、最終形に近い製品になった段階でもっと多くの人の声を集めようとアメリカで行われる大規模な展示会『Maker Faire』に出品。そこで思ってもみなかった反応が起こりました。

それまで私たちは子どもや親子など家庭で使うイメージで作っていたのですが、展示会で興味を持ってくれたのは中学校や高校の学校教育に携わる先生方やデザイナーの方々。教育やビジネスの場でも活用できるかもしれないという気付きがうまれ、デザインの方向性も調整。最終的に社内のデザイナーやブロックを製造する事業所のみなさんにも協力いただきながら、色や形は現在の形に落ち着きました。
こうしてある程度のニーズと形が決まったところで、2015年1月からアメリカのクラウドファンディングサイト『indigogo』に掲載。おかげさまで無事成立し、5月には支援いただいた方々に出荷、7月から一般発売を開始しました。
MESHブロックのプロトタイプ

「文房具のようにだれでも直感的に使えるもの」をコンセプトに開発した
”MESHブロック”のプロトタイプの変遷。

MESHブロックを動かすソフトウエアMESHアプリのユーザーインターフェースの変遷

“MESHブロック”を動かすソフトウエア”MESHアプリ”のユーザーインターフェースの変遷。ツールとして直観的に使いやすいようなデザインに変更。

使う人の創造力やワクワクする気持ちが主役。
MESHはそれをサポートする存在でありたい。

MESHが世に出たとき、もちろんうれしさはありましたが、それ以上に“お客さまはMESHを使ってどんなものを作るんだろう?“というワクワクする気持ちのほうが大きかったのを覚えています。なぜなら、やりたいことをMESHで実現しようとする人の創造性が主役であって、MESH自体は脇役だと思っていたから。MESHは人のアイデアを引き出し、創造性をサポートする存在だと考えていたのです。
実際にスタートしてみると、「こんなものが欲しかった」「子供が夢中になって遊んでいる」などたくさんの反響をいただき驚きました。同時に、私たちが目指してきた“だれもが創造性を発揮できる世界”が少しずつ実現に向かっていることを実感しました。
とくに印象的だったのが、プログラミング経験のない方や、これまでテクノロジーに触れる機会が少なかった方がMESHを使って独創的な作品を生み出しているのを目の当たりにしたとき。私たち開発者の意図を超えた自由な発想に触れ、テクノロジーの可能性は無限大であると改めて気づかされました。

現在、MESHは学校教育の現場で広く採用されているほか、ビジネスの現場や、より専門的な課題解決のツールとしても活用されています。
なかでも印象に残っている事例がふたつあります。ひとつは、ある企業の会議室の利用状況可視化のためにMESHが使われた事例です。その企業では会議室の予約重複や空きスペースの無駄遣いが課題となっていたそうなのですが、MESHの人感ブロックとクラウドサービスを連携させ、各スペースの在席状況をリアルタイムにダッシュボードで確認できるシステムを自作して課題が解決できたそうです。
会議室の利用状況をMESHを使って見える化

会議室の利用状況をMESHを使って見える化

もう一つは、北海道北見市にある『北の大地の水族館』の『館長が出てくるボタン』。これはニュースで取り上げられていて知ったのですが、コロナ禍でお客さまとコミュニケーションがとりづらくなったことを課題に思った館長さんが、気軽に来館者とコミュニケーションを取れるようにと考えたもの。MESHのボタンブロックを押すと館長のスマートフォンが鳴る仕組みで、困りごとを解決するためのツールというMESHを見事に使いこなしていただいた事例だと思います。

このふたつは、専門的な知識がなくてもMESHの直観的な操作と自由な発想が掛け合わさることで課題が解決できた事例。まさに、課題を抱える方々の創造力と熱意のたまものなのだと強く感じました。
館長が出てくるボタン

SNSで話題となり、テレビ、新聞、Webメディアなどでも大きく取り上げられた
「館長が出てくるボタン」

ときどきお客さまからお手紙をいただくことがありますが、そのなかに「以前は自分で何か作ることができると考えたことはなかった。でもテクノロジーを使ったものでも自分で作れることが分かったことでほかの分野にも興味がわき、ものの見方も人生観も変わりました」というようなコメントをいただきます。開発者としてこれほどうれしい言葉はありません。これからもすべての人たちの創造的な活動を支えることができるよう、MESHを進化させていきたいと思います。
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